M1 Mac ゲーム徹底ガイド

第 2 回 M1 Mac ゲームのいろいろ

公開

 ゲームプラットフォームとしての M1 Mac の実力とノウハウについて解説する特別連載,第 2 回の今回は M1 Mac で動作するゲームにはどんなものがあるのか,その分類から見ていきましょう。なお,ネット上で報告されている具体的なタイトルとその動作状況については末尾に挙げた参考資料でご確認下さい。

目次

Universal アプリケーション

 新たに Apple Silicon 用として作られたネイティブなアプリケーションは,多くは従来の Intel Mac でも動作する両用の Universal Binary 構造になっているため,一般には Universal アプリケーションと呼ばれています。M1 チップの能力を最大限に引き出せるように作られいているため,M1 Mac 向けとしては最も理想的な形態です。ただ,現時点で Apple Silicon にネイティブ対応したゲームは iOS 用のものを除くとごく限られており,Universal 化されたゲームが多く出回るにはまだしばらくかかりそうです。
 なお,ゲームのネイティブ化で処理性能が向上するのはあくまで CPU 処理であることはご理解下さい。ゲームのグラフィック処理は主に GPU によって実行されるため,Universal アプリケーションだからと言ってグラフィック処理が劇的に高速化するわけではありません。ネイティブ化の恩恵を受けるのは,主に大規模シミュレーションのような CPU 負荷の高いゲームや,Rosetta との互換性に問題のあるゲームなどです。また,CPU 処理の最適化により VRAM アクセス処理や消費電力が改善される可能性もあります。

World of Warcraft
メジャータイトルとしては Universal 化にいち早く対応した世界的 MMORPG 大作 World of Warcraft
Red Reign
Apple Arcade ではすでに Universal 化されたゲームがいくつか出ている(画面はオンライン対戦型リアルタイムストラテジーの Red Reign)。
Chess
意外な盲点として,macOS にバンドルされたチェスも Universal アプリケーションだったりする。コンピューターの強さは制限時間内に実行できる演算量によって決まるため,M1 Mac の実力は意外と侮れない。

Intel Mac 用アプリケーション

 従来の Intel Mac 用に作られたゲームもその多くが M1 Mac で動作し,M1 Mac 用のゲームとしては現在最も主流を占めるものとなっています。64 bit アーキテクチャーに対応した比較的新しいゲームが動作対象となっており,macOS Big Sur に搭載された Rosetta 2 という互換機能を介して,Intel 用のプログラムコードを Apple Silicon 用に変換して実行するようになっています。
 変換によって生成されたプログラムコードの制約から,ネイティブの場合と比べて 2〜3 割ほど実行効率が低下するなどのデメリットがありますが,M1 チップの性能はそれを補って余りあるもので,多くの場合は同クラスの従来機より高速に動作することが実証されています。また,ゲームソフトの場合は処理の大半が GPU 上で実行されるため,Rosetta による性能ロスは一般のソフトに比べて限定的です。
 なお,旧来の 32 bit 専用ソフトは全く動作せず,64 bit 対応のものでも互換上問題あるものが存在するので,お目当てのゲームが M1 Mac でも問題なく動作するか参考資料などで確認した上で導入を検討して下さい。

Fortnite
Intel Mac 用ゲームでもグラフィック主体のものならネイティブと比べても遜色なく動作する(画面は幅広い層で話題沸騰の 3D オンライン総合バトルゲーム Fortnite)。解像度を控えめに設定すれば夢の 60 fps 固定でアリーナを蹂躙できる。
Civilization VI
CPU 負荷の高い大規模シミュレーションは Rosetta のオーバーヘッドが大きいが,M1 チップの CPU はそれを補って余りある能力を持つ(画面は国家経営シミュレーション大作シリーズの最新作 Civilization VI )。画面モード変更やポップアップなどの軽快な反応性も M1 Mac の優位点である。
Butter Royale
Mac App Store で公開されているゲームのほとんどは 64 bit に対応しているため,その大半が M1 Mac でも問題なく動作する(画面は Apple Arcade で人気のオンラインバトルゲーム Butter Royale )。

iOS 用アプリケーション

 iPhone や iPad 用に作られた iOS 用アプリケーションソフトは原則 M1 Mac でも動作するように作られています。現在 iPhone をはじめとするスマートフォンはゲームプラットフォームとして急成長しており,M1 Mac に iOS 用アプリケーションを導入することにより,今まで Mac であまり出ていなかったジャンルを含めゲームのラインナップが飛躍的に広がります。
 基本的に iOS 用アプリケーションは Mac App Store からダウンロードしてインストールするようになっていますが,販売元の都合により Mac App Store では公開されていないものも多数あります。しかし,iPhone や iPad で正規に購入・入手したアプリケーションであれば,独自の方法でダウンロードすることも可能です。ただし,中には互換性の問題から M1 Mac で動作しないものや,モーションセンサーや GPS 測位を前提としたものなど M1 Mac ではゲームとしてプレイできないものもあります。マルチタッチなどタッチパネル固有の操作はオプションによりトラックパッドで代用したり,ゲームによってはゲームコントローラーで操作できるものもあります。

ラングリッサー モバイル
iOS 用ゲームは Mac App Store で検索してダウンロードすれば M1 Mac でもそのままプレイできる(画面はタクティカルシミュレーションの古典的名作をソーシャルゲームとして復刻したラングリッサー モバイル)。iPhone/iPad でプレイしてた時のデータも Apple ID などと連動することで引き継ぐことが可能。
iMobie M1 App Checker
Mac App Store で公開されていないアプリケーションでも iMobie M1 App Checker などを使って独自にダウンロードすることが可能。ただし,中には M1 Mac で正常に動作しないものもあり位置ゲームなど実用上 M1 Mac ではゲームとして成り立たないものもあるので要注意。
アズールレーン
仮想ゲームパッドなどマルチタッチが必要なゲームは「タッチ代替」オプションによりトラックパッドで操作できるようになる(画面は人気のソーシャル式シューティング RPG アズールレーン)。ボタン操作はタッチ位置が決まっているので勘で押す必要があるが,剥がせるタイプのステッカーでトラックパッドに目印を付けるなど工夫してみよう。

Windows 用アプリケーション

 M1 Mac では CPU アーキテクチャーが大幅に変更になったため Boot Camp などの Windows 互換ソフトの多くは使えなくなってしまいました。しかし Windows 用ゲームの一部については Rosetta 上の CrossOver を介して M1 Mac で動作することが確認されています。CrossOver は Windows の API やドライバーを macOS 上でエミュレートする「互換レイヤー」と呼ばれるタイプの互換ソフトで,動作性能や安定性の面では難があるもののスペックの低いゲームなら良好に動作することが知られています。他の Windows 互換ソフトと異なり,Windows を別途インストールする必要はなく,14 日間の無料お試し版も用意されていますので,お手持ちのゲームソフトが動作するか試されたいのなら手軽にインストールして利用できるのが特徴です。
 32 bit 専用の古いゲームにも対応するため,かつて Windows PC を使っていた頃のゲーム資産を活かすには最適なソリューションです。古い Mac 用ソフトの中には Mac/Windows 両対応のハイブリッド製品も多く,CrossOver で Windows 版の方をインストールすれば懐かしのゲームを甦らせることも可能です。主要な Windows ゲームの動作状況やインストール上の注意事項は,末尾に挙げた参考資料でも確認できます。
 また,ゲームクラウドを利用するのも M1 Mac で Windows 用ゲームをプレイする簡便な方法です。GeForce NOW はゲーム用 GPU で知られる nVidia 社のクラウドサービスで,Steam などで購入した Windows 用ゲームをクラウド上で実行し,Mac にも対応したクライアントソフトでリアルタイムにプレイできるようにしたものです。対応タイトルに限りがあり,ゲームの購入代金以外にも月額 ¥1,980 のサービス利用料が必要ですが,同社のハイエンド GPU を搭載したクラウドサーバーは M1 Mac よりも処理性能に優れておりハイスペックなゲーミング PC を別に購入することを考えればむしろ安上がりです。パフォーマンス的には M1 チップの出る幕ではありませんが,GPU 負荷によるバッテリー消費が最小限に抑えられる結果,M1 Mac のもう一つのメリットとしてハイスペックなゲームをモバイル環境で長時間プレイできるようになります。

Star Trek Online
Windows 用ゲームの一部は CrossOver で動作することが確認されている(画面は SF 大作の世界をオンラインのシューティングとスペースバトルで堪能する Star Trek Online)。Rosetta を介した動作になるが,要求スペックの低いゲームなので快適にプレイできる。
Deus Ex
Mac 版が 64 bit 化されていない古いゲームは M1 Mac では動作しないが,Windows 版があるなら CrossOver を介してプレイ可能な場合がある(画面は長編ロールプレイングアクション Deus Ex の記念すべき第 1 作)。
Apex Legends
クラウドゲームサービスの GeForce NOW を利用すれば数多くの最新 Windows 用ゲームを最高のパフォーマンスでプレイできる(画面は Windows 用として話題のオンラインバトルゲーム Apex Legends)。M1 Mac ではバッテリー消費が最小限で済むので高速回線が確保できる環境なら外出先で何時間でもバトルできる。

オープンソース

 これは特殊な技術的知識を要するのであまり一般的ではありませんが,Linux 用のゲームソフトやサポート終了したゲームソフトなどはプログラムソースが公開されているものが多く,それらを適切なオプションでコンパイルするか,パッケージを構築して Homebrew などでインストールすれば,ネイティブで動作するアプリケーションを生成することは理屈の上では可能です。
 一般のユーザー向けにはオープンソースをプリコンパイルして Mac で実行できるアプリケーションとして公開しているものも数多くありますので,通常はそれらをダウンロードして利用することになります。Universal 化された実行アプリケーションはまだほとんど出てきてませんが,Intel Mac 用に公開されている実行アプリケーションの多くは Rosetta を介して良好に動作しますので,当面はそれらを利用してネイティブ化されるのを待つか,腕に覚えがあるなら自力でネイティブ化に挑戦するのも良いでしょう。

0 A.D.
Linux 用のゲームソフトの大半はオープンソース化されていて Mac 用に移植されているものも多い(画面はリアルタイム歴史ストラテジー人気作の 0 A.D.)。Mac 用の実行アプリケーションは現時点ではネイティブ化されていないが Rosetta で問題なく動作する。
Aleph One
メーカーのサポートが終了した古いゲームにはオープンソース化されているものも多く,有志によって最新のシステムに対応した実行アプリケーションが公開されている(画面は Mac 用長編シューティングの古典的名作 Marathon をオープンソースで復刻した Aleph One)。
DOOM 3
旧作ゲームの大半は 64 bit 化されていないため M1 Mac では動作しないが,オープンソース化されていれば有志によって 64 bit 対応される場合がある(画面はかつて MacWorld Expo でも話題になった一人称シューティングの傑作 DOOM 3 をオープンソースによって 64 bit 化した dhewm3)。なお,dhewm3 の実行アプリケーションにはマップデータが含まれていないので,Steam などで別途 Windows 版を購入して移植する必要がある。

参考資料

 最後に M1 Mac で動作するゲームの具体的なタイトルやその動作状況を確認するのに役立つ参考資料を挙げておきます。

次回予告

 次回は Apple Store 返品期限直前滑り込み企画(?)として,M1 Mac の様々な機種やオプションの中から,ゲームを十分楽しむにはどれを選ぶべきか探ってみます。これから M1 Mac をご購入される方はもちろん,すでにご購入された方もお持ちの機種で本当に良かったのか返品期限までにご検討される際の参考になさって下さい。今後のサイト更新や Mac ゲーム情報のチェックは公式 Twitter をフォローして下さい。本稿や Mac ゲームに関するお問合わせやご意見もこちらでどうぞ(必ずしも全てのお問合せにお答えできるわけではありません)。

→第 3 回 ゲーマー目線の M1 Mac 選び
←第 1 回 M1 Mac の実力
←ホームページに戻る
↑先頭に戻る


アサヒテクノサービス株式会社
Macintosh ゲーム情報
Twitter: @MGJ_Interactive